好きだ!好きだ!大好きだッッ!!

2018年09月18日 20:00

稲海"【タイトル】 好きだ!好きだ!大好きだッッ!!
【制作】 稲海 かずき様

好きだ!好きだ!大好きだッッ!!【ジャンル】 ラブコメノベル
【対象】 全年齢
【ED数】 4種類
【スチル数】 4枚
【プレイ時間】 1周5~15分(トータル30分)程度
【ツール】 Ren'Py
【容量】 128MB
【公開日】 2018年5月5日
【プレイver.】 1.00

夕暮れに染まる教室。
二人きりの男女。
見つめ合う目と目……
そう、ここまで読んだ貴方ならお気付きかと思う。

私は、断じてコイツのことなんか好きではない!!! (readmeより引用)


選択式のノベルゲーム。

こちらは「ゴールデンウィークだよ!一週間ゲーム製作大会」に参加し作られた作品のようです。
確かに短編ですが、ストーリーも丁寧だし、絵も綺麗だし、一週間で作ったとは思えない良作です。

断じて好きではない!!!って、ダイエット中の女子がスイーツを前にして言っているぽくて、ちょっと笑えます。
しかし、個人的にちょっと苦手な青春ラブコメノベル……と思いきや、不覚にも感情移入してしまいうるっときました。
学生時代の、打算も計算もなくただただ相手を「好き」だった感情を思い出したというか。
知られるのが怖くて、好きなのに好きじゃないよ?ってフリをしてみたり。
いつも相手のことを目で追いかけて、ひとつひとつの仕草をあぁ好きだなぁ、と思ったり。
コメディタッチなのですが、単なるドタバタ劇や上っ面の会話ではなく、感情が丁寧に描かれていたと思います。

最初は月子ちゃん視点で物語が進んで行きます。
エンディングは2つ。進展あり、なしに分かれます。
どちらに転んでも、それはそれであぁ、青春だなぁ……と思える終わり方ではありました。
ただっやっぱり、進展ありのエンディングでは、ちょっと甘酸っぱくて身悶えしそうでした。
良いですねぇ良いですねぇ(*´∀`*)

そして、クリア後からは連くんでのプレイが出来るようになります。
月子ちゃんルートで見た展開を連くんの視線で見ていくことになるのですが、全く同じという訳ではなく。
月子ちゃんが連くんに惚れた理由は何となく分かるんですが、
連くんのストーリーを見ると彼が何故月子ちゃんを好きになったのかも分かります。
連くんルートも進展なし・ありの2種類のエンディングあり。
こちらの進展ありエンドは、月子ちゃん編より更に甘くて、更に身悶え(*/∇\*)

何か、こう、清々しい良い気持ちを分け与えて貰えた気分です。ありがたや。
読んで良かったと思いました。
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幸福の塔

2018年08月24日 20:00

稲海【タイトル】 幸福の塔
【制作】 稲海 かずき様

幸福の塔【ジャンル】 ノベルゲーム
【対象】 15歳以上(高校生~)推奨
【ED数】 5種類
【プレイ時間】 1周20分(トータル1時間10分)程度
【ツール】 Ren'Py
【容量】 160MB
【公開日】 2018年2月11日
【プレイver.】 1.03

歪みの果てに、幸福はあるか。

昔々、そのまた昔、救世主は悪い悪いドラゴンを倒しました。
人々に讃えられ、崇められた救世主は言います。
「穢れを知らぬ子供たちの手で、空を越えた遥か彼方、
『神の国』まで届く塔を建てねばならぬ。そこには苦しみも悲しみも、ありはしないのだ」
国中から集まった子供たちは、まだ見ぬ『神の国』を目指し一心不乱に塔をつくります。

それが一体、何であるかも知らないままに。 (readmeより引用)


選択式のノベルゲーム。

「救世主」や「神の国」等、宗教的な言葉にどこか胡散臭さを感じてしまうのは、日本人だからでしょうか。
ただ、紹介文からしても「幸福の塔」とやらが謳い文句通りでないのは明らかですし、
暗い物語を覚悟してのプレイでした。

セピア色の背景に、背景とシンプルな人物画で構成された画面。
残酷な物語も、どこか御伽噺のような昔話ような雰囲気です。

幸福の塔にどこからともなくひとりの子供がやって来ます。
男の子とも女の子とも知れない、ぼろ布を纏った子供。喋ることができないようです。
プレイヤーはその子を目を通して塔の様子を知っていくことになります。

幸福の塔というからには、少なくとも表面上は幸福を装っているのかと想像していました。
しかし、中身は想像より遥かに残酷でした。

主人公は、行動する場所によって3名の主な人物と交流(?)することになります。
人物によっては鼻もちならないというか酷いやつもいて、憤りを感じるのですが……
主人公が喋れないことに安堵してか、物語が進むにつれ彼らは本音を語り始めるのです。
彼らの色々な面を知り、そしてどういう結末を迎えるかを見届ける。
しかし何より、そんな彼らの健気さや狂気、横暴を目の当たりにしても無反応な主人公が謎過ぎて
この子は一体何者?というのが一番心惹かれるポイントなのでした。

ルートによっては、思わず目を背けたくなるようなかなり残酷なものもあります。
また、意外な事実が分かって驚かされるようなものもあり。
決して楽しい話ではありませんが、物語として読み応えがあるものでした。

エンディングは全部で5つ。
5番目のルートで、ようやく主人公の正体が明かされます。
このルートは救いのようでもありますが、塔の背後に控えているものを考えると決して救われたとは思えず。
最後まで暗澹たる気持ちでした。

※この先少しネタバレになるかもしれないので、反転しないとみえないようにしています。

物語を書くのがとても上手い作者さんだと思うので、敢えて個人的に気になったところを挙げますと、

主人公の最後の語りが少し平凡で大物感を感じなかったことでしょうか。
もう少し神々しい台詞か、もしくは主人公は最後まで何も喋らない潔さがあっても良かった気がします。

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籠の街

2018年07月27日 20:00

籠の街【タイトル】 籠の街
【制作】 稲海 かずき様

籠の街
【ジャンル】 ノベルゲーム
【対象】 全年齢
【ED数】 8種類
【プレイ時間】 1周30分(トータル2時間)程度
【ツール】 Ren'Py
【容量】 247MB
【公開日】 2017年7月1日
【プレイver.】 1.11

少年は、自問自答を繰り返す。

小さな街。僕の住む街。僕の育った街。僕はこの街が好きだ。
変わりたくなかった。変わっていくのが怖かった。
大人になりたくなかった。子供のままでいたかった。
僕は、このままでいたかったんだ。 (制作サイトより引用)


第13回 ふりーむ!ゲームコンテスト 短編部門にて金賞を受賞された作品。

コンテスト受賞作をプレイさせて頂くと、時折「これはまさに金賞に相応しい……!」と
膝を打つ名作に出会えます。この作品もそのひとつでした。

おとぎ話のようでもあり、世界のどこかに存在する遠い国のようでもある、異国情緒ある街が舞台です。
大人になりたくない少年と、少年が大切に思う人々の物語。

私は、自分が子供の頃には「子供のままでいたい」と思うことはなかったように思います。
子供時代は上手くいかないことばかりで、満ち足りたものではなかったから。
なので、この物語の主人公はきっと今がとても幸せな子供なんだろうなと思っていました。

少年には両親がいないようです。
しかし、口うるさくも気さくなおばあちゃん、友達のお嬢様、坊やと良い人たちに囲まれていて。
時には喧嘩もするようですが、きちんと意見をぶつけ合える良い関係で、確かに幸せそう。
主人公含めこの物語の人々はきちんと自分の意見と考えを持っていて、恐れずにそれを語ります。
特にお嬢様。
世間知らずのご令嬢のようで、物事を深く、広く、それでいて真っ直ぐに見据えることのできる少女でした。
そんな彼女の語り口には、感銘を受けました。

エンディングは、それぞれの登場人物×2つずつ。
最初は、おばあちゃん、お嬢様、坊やの3人で、それらをクリア後にもうひとり登場します。
どこかに作者さんお薦めのプレイ順が書いてありましたが、私は心の赴くままにやりました。
真っ先にプレイしたのは、おばあちゃんルート。
自分がおばあちゃんっ子だったので、おばあちゃん好きすぎて困りました。

あれ?と思ったのは、多少の差はあれ、2つあるエンディングがどちらも似ていること。
ひとつは一歩だけ大人になったエンド、ひとつは子供のままで幸せエンドなのかな……?
でも、何となく中途半端なような、分かり辛いような。
そう首を傾げつつ4人目のお話を読んで、疑問が全て氷解しました。
まさに、このルートに物語の神髄が詰め込まれています。

最後は、少年が子供のままで過ごしたいのか、大人になる一歩を踏み出すかの選択があります。
どちらを選ぶにしろ、少年は自分の考えをはっきりと述べていて。
それを聞いていると、必ずしも大人になることが正しく唯一の道とは思えなくなりました。

ただ、どちらが良いとか、少年の気持ちは差し置いて、私は少年に大人になって欲しいと願いました。
そしてその先に、この道を選んで良かったと思える日が来るように。
読んでいて涙が零れそうで、それを堪えながら心底そう願いました。

※この先に、少しだけネタバレかもしれない部分がありますので、反転させないと見えないようにしています。

特に、【おばあちゃん、お嬢様、坊やの名前が明かされる】シーンは本当に泣きました。
今まで出ないのが不思議に思っていたのに……ここで……。

ちなみにこちらの作品、フリー音楽素材として提供されている「今宵夢の終わりにて」という曲が
メインテーマとして採用されています。
公式ホームページや、タイトル画面で流れる音楽です。
これが、フリー素材ながら実はこの作品のために作られたのでは?と思ってしまう程ぴったり。
今でも聴くと、物語を思い返して涙腺が緩みます。

イラストも綺麗ですし、読んで良かったと心底思える良質のノベル作品でした。
「物語」を読みたい方、ぜひお手に取ってみて下さい。お薦めです。
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