2018年06月30日 19:31

【制作】 有限の遑 皐月の夢様

【ジャンル】 女性向け恋愛ADV
【対象】 12歳以上(中学生~)推奨
【ED数】 12種類
【スチル数】 25枚
【プレイ時間】 1周2時間(トータル6時間35分)程度
【ツール】 LiveMaker
【容量】 68.1MB
【公開日】 2016年1月6日
【プレイver.】 1.21
普通の女子高生生活をしていた衣純/イスミ(名前変更可能)の前に、
白髪の青年、マシロが現れる。
「迎えに来たよ」と言うマシロによって、衣純は不思議な世界に連れ込まれてしまう。
そこはトランプの国、ハートの国と言うらしく、魔物や妖精など、
不思議な生物が存在する異世界だった。
衣純はハート国で帽子屋のユリオス、チェシャ猫のカミオと出会う。
ハートの国の女王と会った衣純は、彼女に言われる。
「この国を救って下さい。そうすれば、あなたを元の世界に帰しましょう」
ハートの国の救世主という一翼を担うことになった衣純。
滅亡しかけたハートの国を救うため、そして元の世界に帰るため、衣純は彼とともに旅に出る。
(ふりーむ!作品ページより引用)
タイトルの通り、不思議の国のアリスをモチーフにした乙女ゲームです。
いやー、心底好き!と思えてのめり込む乙女ゲームに出会えました。
私、「不思議の国のアリス」の原作は読んだことがないのですが、
小さい頃に読んだアリスの絵本が怖くて、今でもアリスと聞くと軽い嫌悪感を覚えます。
そんなプレイ前のマイナスイメージからの大逆転でした。
プレイ時間もかなり長いものの、飽きる事なく、長さを感じずにプレイできました。
この作品が好きな理由として、
・ 乙女ゲーかどうかを問わず、冒険ものが好き
・ ファンタジーが舞台の乙女ゲーが好き
・ 主人公がピンチに陥ったところを助けてくれる展開のある乙女ゲーが好き
と、好みのツボを突かれる要素がたくさん。
また、シナリオの展開や台詞回しが絶妙で、後半の盛り上がりでぐっと心を掴まれました。
物語は典型的な異世界トリップもの。
主人公の衣純が、白兎のマシロにハートの国へ連れてこられるところから始まります。
しかしこのマシロ、見るからにヤンデレ系でして。
私はヤンデレがあまり好きじゃないので、「うわー、この人怖い」と序盤は警戒しまくりでした。
また、そのマシロとは悪友というか犬猿の仲の、チェシャ猫カミオ。
そして帽子屋のユリオスと出会う事になります。
キャラクターの傾向として、マシロは一人ヤンデレ担当として異彩を放っており、
カミオとユリオスが飄々として軽い系で、この2人は少々似ている気も。
ただストーリーを進めて行くほどに違いは出てくるかと思います。
プレイしていると、図らずも最初にマシロルートに突入。
上記のようにこの方に対しては警戒心を感じつつプレイしていました。
序盤は確かに一方的な思い込みを見せるマシロですが、衣純と接するうちに変化が表れます。
ハッピーエンドのルートでは、序盤がそういう人なだけにクライマックスの展開には感動しました。
その辺りのストーリーの見せ方、本当に上手いと思います。
ただし、バッドエンドのひとつでは、ヤンデレ好きさんの期待に漏れず彼の本領が発揮されており……。
やっぱり来たか!と思いましたが、何となく怖さより切なさを感じました。
カミオは、一見気まぐれでチャラい人物に見えますが、接してみると意外な面が見えてくるのが魅力。
ただ、マシロとは違うとはいえ彼も大切なものがハッキリしているキャラクターで。
後半では、そこをキーポイントにした展開が魅せ場となっています。
カミオはハッピーエンド目指したのにバッド2へ辿り着いてしまったキャラだったのですが、
バッド2の展開には衝撃を受けました。え、何それ!?それじゃ衣純の決心は何だったの!?と。
想定外の驚きを感じたという点では良いものの、一番納得いかないエンドでした。
ユリオスは、最初から最後まであまり印象としては変わらないキャラです。
年齢が他のキャラより高く保護者的な存在なのですが、かと言って大人びている訳ではなく。
飄々としていて不真面目な感じでしょうか。
彼の場合、ラストでの台詞回しが本当に素敵でした。
この方はハッピーエンドもノーマルエンドもどちらの展開も大好きです。
その分バッドエンドのひとつはすごく悲惨で……ある意味死ぬより辛いかもと思ってしまった。
ただ、これはこれでお好きな方もいると思われます。
クライマックスの展開はどのキャラも素敵すぎて、クリア後もその辺りだけを何度も見返したのですが、
読み返した回数はユリオスが一番多いです。
ストーリーの骨格として、面倒なことは避けがちで立ち向かうことがなかった衣純が、
徐々に「変わりたい」と願い、勇気を振り絞っていく成長も描かれています。
最終的に現実世界へ戻る結末も用意されているのですが、この世界での経験が無駄にはならず、
良い影響(と、趣味)を与えているのは救いのように思えました。
それから、この辺にはあまり触れない方が良いとは思うものの、思わずにはいられないこと。
以前に別の異世界トリップものの作品でも書いたことがあるのですが、
女子高生が異世界に飛ばされてそのまま残るという展開についてです。
残された家族や友達のことを思うと気が重いです。めちゃくちゃ心配するだろうに(・ω・`)
ただ、前述の別作品では主人公がわりと軽いノリで異世界に残ったので心底そう思ったのですが、
今作では衣純がそこを分かった上で悩んで決断を下していることと、
現世界に戻るルートで、連れ去られた時点から時間が経っていなかったこと。
その2点では受け入れやすかったかもしれません。
もういっそ、天涯孤独という都合の良い設定にして欲しいと思わなくもないですが……
この作品の場合は、衣純は現世界に帰りたいと強く願っている点も肝になっているのですよね。
その点では「現世界に大切なものがある」のは必然ではあります。
フィクションでそこまで考えなくてもと我ながら思うのですが、どうしても引っ掛かってしまい
諸手を上げて喜べないので、異世界トリップ作品は毎回複雑な気持ちです。
沙鳥(11/18)
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長友(08/28)